コラム

危険物とは?危険物の特徴と輸送時の注意点について解説

危険物とは?危険物の特徴と輸送時の注意点について解説
INDEX 目次

本記事では危険物とは何か、どういった貨物が該当するのかに加えて、貨物輸送での注意点や対応事項について解説します。

危険物とは?定義と関連法規の基礎知識

危険物とは、人の生命・健康・財産・環境に重大な影響を及ぼす恐れがある物質・製品を指し、国際連合(UN)では危険性の質に応じて1〜9のクラスに分類しています。
危険物によっては複数のクラスに該当するケースもあり、副次的危険性と呼称します。

危険物に該当する貨物は、その危険性が一目でわかるようにするため、法律で定められた規則に従ってラベルを貼り付ける必要があります。

UN9クラス早見表

前述のように、国際連合(UN)では危険性の質に応じて9つのクラスに分類し、4桁の代表UN番号(国連番号)を割り振っています。9つのクラス分類は下表の通りとなります。

クラス
等級
日本語区分
英語区分(原文)
代表品目(例)

1

火薬類

Explosives

花火(1.3G)

2

ガス類

Gases

LPG(液化プロパンガス)

3

引火性液体類

Flammable liquids

ガソリン

4

可燃性物質類(固体・自然発火・水反応)

Flammable solids / Spont. combust. / Water-reactive

マグネシウム粉

5

酸化性物質類(酸化性物質・有機過酸化物)

Oxidizing substances & Organic peroxides

過酸化水素(60%)

6

毒物類(毒性・感染性物質)

Toxic & infectious substances

シアン化ナトリウム

7

放射性物質類

Radioactive material

医療用同位体(Ir-192)

8

腐食性物質

Corrosive substances

フッ化水素酸

9

その他の有害物質等

Miscellaneous dangerous goods

リチウムイオン電池

容器等級と副次的危険性

危険物は、危険度の大きさを容器等級というクラスで表します。
梱包等級は I → II → III の順に危険度が下がり、引火点・毒性値・腐食度などの試験基準に従って決定されます。等級により梱包設計や容器強度、最大充填量の制限が異なります。高圧ガスや放射性物質などは梱包等級を適用しないケースもあります。

また、副次的危険性を持つ物質には「副次的危険ラベル」の追加表示が必要です。例えば硝酸は酸化性〈5.1〉に加え腐食性〈8〉も併せ持つため、二つのラベルを表示します。副次的危険性は輸送書類にも記載義務があり、記載漏れは重大違反となるため、注意が必要です。

国内法と国際基準のギャップ

日本の消防法や毒劇法は、UN分類とは異なる区分で規制されています。例えば消防法「第4類危険物(第1石油類)」は主にUNクラス3(可燃性液体)ですが、酸を多く含む場合はクラス8の要素も持ちます。
実務では以下を二段階で確認することが基本です。

  • 国内法で保管・運搬許可が必要か
  • 国際輸送書類ではどのクラス・UN番号に該当するか

危険物輸送に関わる主な法規制





危険物輸送には国内法と国際ルールの双方の遵守が必要です。国連の「危険物輸送に関する勧告」(オレンジブック)が世界的な統一基準となっていて、各国の規制もこれを基礎としています。

日本国内では、消防法、火薬類取締法、高圧ガス保安法、毒物及び劇物取締法などが代表的な規制法です。

国際輸送においては、輸送手段ごとに特定の規則が適用されます。

  • 航空輸送:国際民間航空機関(ICAO)の技術指針/IATA危険物規則(IATA DGR)
  • 海上輸送:国際海事機関(IMO)の国際海上危険物規程(IMDGコード)

発地国・経由国・仕向け国それぞれの国内法も確認が必要です。

輸送モード別:陸・海・空それぞれの危険物輸送ポイント


このセクションでは、主な輸送モードごとに安全に輸送するための留意点を解説します。

海上輸送における注意点

船舶による危険物輸送は、IMDGコード(国際海上危険物規程)に従います。海上輸送の特徴は以下の通りです。

  • コンテナ単位での大量輸送が多いため、梱包・容器の安全性確保とコンテナへの表示が重要
  • UN規格適合容器(UNマーク付き)の使用が必須
  • 危険物ラベルや国連番号を外部に表示
  • 場合によって船会社へのコンテナごとの危険物明細書の提出
  • 他の積荷との区分け(区画隔離)が必要となるケースも
  • 耐水性の応急措置指示書の備え付け

航空輸送における注意点

航空輸送では、IATA危険物規則に従い、以下の点に注意が必要です。

  • 搭載禁止物質の存在(大量の可燃性液体や特定の爆発物、一部リチウム電池など)
  • 梱包に入れられる量(ネット量)や容器規格の厳格な規定
  • 乗客機と貨物専用機による基準の違い
  • 危険物申告書(DGデクラレーション)の提出(資格者による確認・署名が必要)
  • クラスラベルや「航空輸送用」表示(例:Cargo Aircraft Onlyラベル)の貼付
  • 書類と梱包の厳格なチェック

陸上輸送における注意点

トラックなどによる陸上輸送では、各種国内法(消防法、毒劇法、高圧ガス保安法など)に基づく対応が必要です。

  • 一定量以上の危険物積載車両への表示板(標識板)や表示票の掲示
  • イエローカード(緊急連絡カード)の携行
  • 危険物取扱者(甲種・乙種など)資格を持つドライバーの確保
  • 積荷点検と車両安全装置の確認
  • 危険物の種類に応じた安全装置の設置/li>
  • 運行経路の制限(トンネルや都市部など)の把握

荷主が講じるべき対策

前述のように、危険物の輸送は通常の貨物輸送と比べて注意事項が多く、法規制も行われています。

十分な知見を持つ輸送業者を起用することは非常に重要ですが、荷主側でも危険物の取り扱いに関して一定の知識が必要となります。このセクションでは、荷主側で実践できる対策をご紹介します。

①社内教育と情報共有

  • 危険物の分類・梱包・表示方法
  • 書類作成手順(Shipper’s Declaration/Dangerous Goods Noteなど)
  • 緊急時の社内外連絡フロー

②輸送計画とリスクアセスメント

  • 製品 SDS・UN番号を基に危険度・数量・想定経路を評価
  • 長大トンネルや人口密集エリアを迂回する代替ルートを検討
  • 台風・大雨・大雪など気象リスクを踏まえた出荷可否基準を設定

③緊急時対応ドキュメントの整備

  • イエローカードや応急措置指示書に自社の緊急連絡先を追記
  • 運送会社へ提供する製品別の初動対応マニュアルを作成し、定期的に最新版を共有

また、危険物輸送の流れについてより具体的に知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
記事:【危険物輸送の流れとは?実務フローと三菱商事ロジスティクスの最新ソリューションを紹介】

安全・確実な危険物輸送のご相談は、三菱商事ロジスティクスへ





危険物輸送では「UN番号に基づいた適切な取り扱い」 「モード別ルールの遵守」「綿密なオペレーション計画」「万全の安全対策」が安全輸送の柱となります。

これらを徹底し、信頼できるパートナーの知見を取り入れることで、危険物輸送に伴うリスクは大きく低減できます。危険物輸送にお悩みでしたら、ぜひ三菱商事ロジスティクスにご相談ください。

【出典】
 ・危険物国際輸送における留意点:日本 | ジェトロ
 ・危険物輸送に関する国際的な取り決め | リサーチ・ナビ
 ・危険物の海上運送等に係る安全対策 | 国土交通省
 ・DOT Chart 17:Hazardous Materials Markings,Labeling and Placarding Guide

Contact us.

お気軽にご相談ください